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図書室の悲惨  (福場将太・著)
■あとがき

 早いものでこの物語を書いてもう15年になる。卒業式も終わり4月からの大学進学の準備に追われていたはずの3月、どうやってか時間を作って一気に書き上げた記憶がある。当時はまだパソコンなんて手元になく、ワープロを使っての執筆だった。いわゆる構成とかプロットというものをを全く立てず、犯人や結末さえも未確定のままで書き始めた。まあ一種のビギナーズラックと言うのだろうか、伏線じゃなかった者も偶然伏線になったりしてとりあえずエピローグに辿りついた、という何ともいい加減な物語である。

 今回新装版の作成に当たり15年ぶりに読み返してみたが…一言で言えばやっぱりこれは青春小説だと思った。当時は感じなかったが作中の校内の雰囲気や登場人物たちの言動がとても青春臭い。ラストの犯人判明後のシーンにしても、まるで「走れメロス」の結末のようだ。現実世界ではこんな悪行を働いた犯人に対してみんなが笑顔で許すなんてことは有り得ない、でもそれが許されている辺りとても青春臭いと思う。
 まあ舞台も登場人物も現実に僕が通っていた高校をモデルにしているから余計にそうなんだろう、読み終えた感想はまず「懐かしい」だった。偶然所属することになった図書委員会、そこにいた計算ではとても集められないメンバーたち。きっとそこは僕の大切な場所だったんだろう。だからこそ本作の執筆を思い立ったに違いない。
 今回読み返せばあちこちに筆を入れたい部分はあったのだけれど、やっぱり本作の本質はその稚拙でも微笑ましい雰囲気だと思ったので修正はどうしても表現がおかしい部分や説明不足の部分のみにとどめた。その意味で今回の新装版は特にストーリーに変更があったわけでも新しいシーンが加わったわけでもない。登場人物たちは相変わらず携帯電話もない時代の中でツッコミどころ満載のミステリーを演じている。それでもこの新装版に意味があるとすれば、ワープロでしか読み取れないフロッピーというこれまた懐かしいアイテムの中にしか残っていなかった本作がネット上でいつでも気軽に読めるようになったことだろう。15年前は1枚1枚ワープロで印刷した原稿を卒業生のぶんざいで先生に頼み込んで増刷してもらい、自分で製本して仲間内に配布するのが精一杯だったのだから。あの時印刷を頼んだ先生、密かに読破してくれてわざわざ解説まで書いてくれてこっそり最後のページに入れて印刷してくれたのは本当に嬉しかった。こんな愚かな生徒の勝手な活動を、仕事の枠をはみ出してまで小粋なサービス込みで応援してくれた先生…そんなことを考えるとまた母校への愛しさが込み上げる。

 計算では書けなかった作品、それがこの「図書室の悲惨」である。読んで頂いて少しでも何かを感じてもらえたなら嬉しい。そして今回の機会を与えてくれた岡田憲司くん、同じ母校の学友であり、実は図書委員会のメンバーでもあった彼に心からお礼を言いたい。

平成26年1月 福場将太

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